こんにちは、弁護士の橋本です。
今回は、「弁護士の使命」について考えてみたいと思います。
弁護士法第1条はこのように定めています。
「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」
「基本的人権」は、憲法を勉強したことがある人でしたら、一度は聞いたことがある言葉でしょう。憲法は、基本的人権として様々な権利を定めています。例えば、法の下の平等(人を人種や信条、性別などで差別してはならず平等であること)(14条)、思想良心の自由(19条)、表現の自由(21条)、居住や職業選択の自由(22条)、学問の自由(23条)、教育を受ける権利(26条)、財産権(29条)、などがあります。また、刑事手続きにおいて、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利(37条1項)、弁護人選任権(37条3項)、自白の強要の禁止(38条)など様々な権利が定められています。その一つ一つが重要なのですが、一言で述べると、「私たちは、お互いの権利を尊重しながら、自由に生きる権利がある。」ということです。これを端的に示したのが憲法13条の幸福追求権で、次のように書かれています。
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
弁護士が、刑事事件の被告人を弁護したり、財産関係で生じたトラブルを解決するために訴訟代理人として民事裁判を行ったりするのは、正に、「基本的人権の擁護」活動の一環なのです。
それでは、弁護士のもう一つの使命である「社会正義の実現」とは何でしょう。
一つには、理不尽な扱いを受けて辛い思いをしている一人一人の権利を守ることで、社会全体の正義の実現につながる、ということでしょう。
ところで、人は自由に生きる権利があるといっても、皆が自分の権利ばかり主張していたらどうなるでしょう。人々が平穏に暮らすことができなくなってしまいます。権利だからと言って、むやみに振りかざしていいものではありません。法は、強い立場の者に自由勝手やわがままを許すためのものではありません。自分が自由に生きるためには、ほかの人も自由に生きられるように配慮することが大切なのです。
私たちの日常生活にもっとも関わりの深い法律である民法の冒頭には、このような定めがあります。
第1条(基本原則)
- 私権は公共の福祉に適合しなければならない。
- 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
- 権利の濫用は、これを許さない。
第2条(解釈の基準)
この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。
法は、権利の濫用や反社会的な要求に加担するものではない、ということをお分かりいただけたでしょうか。
基本的人権の擁護、つまり目の前の依頼者の権利を守るための活動とともに、社会正義に叶うような活動をしなければなければならない、ということを、弁護士法第1条は定めているのです。
私自身、この機会に、弁護士の使命について思いを巡らし、弁護士になったころの初心を忘れずに、日頃の活動で実践していきたいと思います。