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司法過疎とひまわり基金法律事務所

 こんにちは。弁護士の橋本です。

 今回は、私が弁護士として取り組んできた司法過疎問題について紹介します。

 今では弁護士の数が増えて、地域に全く弁護士がいない、というところはほぼ無くなりましたが、20年ほど前までは、弁護士がいない地域が全国にたくさんありました。例えば、青森県では、長い間、青森市、八戸市、弘前市にしか弁護士がいませんでした。県内には、3市以外にも、十和田市と五所川原市に青森地方裁判所・青森家庭裁判所の支部が、むつ市、野辺地町、鰺ヶ沢町に簡易裁判所・青森家庭裁判所の出張所がありますが、それらの地域に弁護士が一人もいなかったのです。全国的にも、都市部以外には、ほとんど弁護士がいませんでした。

 法的なトラブルは日本全国どこで暮らしていても起こりえます。トラブルに巻き込まれたり、理不尽な扱いを受けたりしても、近くに弁護士がいなければ、弁護士に相談することが困難です。そもそも弁護士に相談しようという思いにすら至らないでしょう。

 この事態を重く見た日本弁護士連合会(日弁連)は、1999年5月の定期総会で、「弁護士過疎地域における法律相談体制の確立に関する宣言(名古屋宣言)」を採択しました。日弁連は、全会員(弁護士)から特別会費を徴収して「ひまわり基金」を創設し、「ひまわり基金」を活用して、各地の弁護士会、弁護士会連合会と協力して全国の弁護士過疎地域に法律事務所を作り、弁護士を派遣しました。これが、全国各地にある「ひまわり基金法律事務所」です。

 「ひまわり基金法律事務所」の第1号は、2000年、島根県浜田市に設立された「岩見ひまわり基金法律事務所」です。その後、全国に累計で118カ所(2018年時点)のひまわり基金法律事務所が設立されました。

 ひまわり基金法律事務所の所長弁護士は任期制です。通常、2年から3年の任期で次の所長弁護士にバトンタッチしますが、事務所を引き継いで、「ひまわり基金法律事務所」の看板を下ろして自ら経営することもできます。これを私たちは「定着」と呼んでいます。これまでに多くの所長弁護士が定着してその地域の弁護士となることで、「ひまわり基金法律事務所」はその役割を終えており、私もそのうちの一人です。現在、ひまわり基金法律事務所として稼働しているのは全国で40事務所を下回っており、裁判所支部所在地で弁護士がいないか1名しかいない地域(ゼロワン地域)は解消されました。

 県内第1号は、2002年に五所川原市に開設された「五所川原ひまわり基金法律事務所」です。同じ年に当事務所の前身の「十和田ひまわり基金法律事務所」、2006年にむつ市に「むつひまわり基金法律事務所」、2007年に五所川原市に「つがるひまわり基金法律事務所」、2008年に三沢市に「三沢ひまわり基金法律事務所」が設立されました。このうち、「つがるひまわり基金法律事務所」以外の4つの事務所は、開設時にはその市で唯一の法律事務所で、それぞれ後に、所長弁護士が定着して終了しました。「つがるひまわり基金法律事務所」は、五所川原市内で2番目の法律事務所として設立され、現在、県内で唯一の「ひまわり基金法律事務所」です。

 各地に「ひまわり基金法律事務所」が開設されたことで、地域の人々の司法アクセスが大きく改善しました。その結果、今まで弁護士に相談できずに困っていた人が弁護士に相談できるようになりました。また、各地のひまわり基金法律事務所の成功もあって、それまで弁護士が少なかった地域で開業する弁護士の数が増えました。

 県内で見ると、青森市に44名、八戸市に30名、弘前市に21名の弁護士がいるほか、五所川原市に4名、むつ市に5名、鰺ヶ沢町に1名の弁護士がいます。青森地方裁判所・青森家庭裁判所の十和田支部がある十和田市と十和田支部管内の三沢市には、現在、当事務所(十和田事務所・三沢事務所で弁護士3名)のほか、5つの法律事務所、6名の弁護士がいます(2020年4月1日時点)。

 私は、2010年6月に「十和田ひまわり基金法律事務所」の4代目所長として赴任し、2014年1月に「弁護士法人青空と大地」を開設して「ひまわり基金法律事務所」の看板は下ろしました。これからも、ひまわり基金法律事務所のスローガンである「津々浦々にひまわりの花を」の精神で、全国各地で日夜司法アクセスの向上に取り組んでいる仲間たちとともに、地域の皆さんの期待に応えていきたいと思います。