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民事訴訟手続

 こんにちは、弁護士の橋本です。

 テレビや新聞、インターネット上のニュースなどで裁判の話題がよく取り上げられていますが、裁判手続がどのように行われているか、多くの方にとってあまり馴染みがないと思います。そこで今回は、民事訴訟手続について紹介します。

1 民事訴訟の対象となる事件の例

 売買代金請求、請負代金請求、貸金返還請求、損害賠償請求(交通事故など)、土地や建物の明渡請求、境界確定、登記請求、賃金支払請求などです。市民や法人(会社等)のトラブルを扱います。

2 管轄裁判所

 訴額が140万円以下の請求は簡易裁判所、140万円を超える請求は地方裁判所の管轄となります。これを事物管轄といいますが、例外もあります。どこの裁判所に管轄権を認めるかを決めるのは土地管轄です。私が行く機会が多い青森地方裁判所十和田支部、青森地方裁判所(本庁)、青森地方裁判所八戸支部の管轄は次のとおりです。

十和田支部;十和田市、三沢市、上北郡(六戸町、おいらせ町)、三戸郡(五戸町、新郷村)

青森地裁(本庁);青森市の内旧青森市、東津軽郡、上北郡(野辺地町、横浜町、六ヶ所村、東北町、七戸町)

八戸支部;八戸市、三戸郡(階上町、三戸町、田子町、南部町)

 十和田市に接する七戸町、東北町等、上北郡の多くの町村が青森地裁(本庁)管轄となっています。

3 民事訴訟の流れ

 ここでは、車両同士の物損事故で自分の車両(時価150万円)が全損した、という事例で裁判の流れをお話します。民事訴訟では、請求する側を「原告」、請求される側を「被告」といいます。よく「被告人」と混同される方がいますが、被告人というのは刑事事件で訴追された人のことですので、民事訴訟の被告とは全く別です。

(1)訴状提出

 原告は、「訴状」という書面を作成して「書証」(証拠書類)と一緒に裁判所に提出します。訴状には、「当事者」(誰が誰を訴えるのか)のほか、「請求の趣旨」(裁判所にどのような判決を求めるか)と「請求の原因」(原告の請求が認められるべき法律上の根拠)を整理して記載します。

 請求の趣旨としてはこんな感じです。

「被告は原告に対し、金150万円及びこれに対する令和●年●月●日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え」

 請求の原因は、事故の日時、場所、双方の車両、事故態様、相手方の過失、相手方の責任原因、具体的な損害項目と金額などを記載します。

 訴状に印紙を貼り、裁判所所定の切手を併せて提出します。150万円の請求の場合、印紙は1万3000円、切手は大体7000円くらいです。

(2)受付、訴状審査、期日指定

 訴状を提出すると、裁判所で受付をして審査を行います。訴状の形式が整っているか、請求に法律上の根拠があるか、誤記がないか、といった点をチェックします。問題があれば、裁判所は原告に対して補正(訴状の訂正)を求めます。問題がなければ裁判所と原告が相談して第1回口頭弁論期日を決め、裁判所が期日指定して、被告に訴状副本、期日呼出状、書証を送達(郵送)します。第1回口頭弁論期日は、訴状審査から概ね1月から1月半くらい先の日(平日の日中)で指定されます。

(3)第1回口頭弁論期日

 原告は、第1回口頭弁論期日に出頭して訴状を陳述する必要があり、法廷で、裁判官に対し、「訴状を陳述します。」と述べます。弁護士を代理人に選任していれば、本人は行く必要はありません。第1回口頭弁論期日は被告の予定を聞かずに指定されます。そのため、被告や被告代理人は出頭しなくても構いませんが、原告の請求を争う場合には、予め「答弁書」を提出しておく必要があります。

 次回は、被告が訴状を受け取った後の対応から訴訟の進行、終了までお話します。