青空カフェcafe

架け橋

 こんにちは、弁護士の橋本です。

 先日、ウクライナ出身の歌手でバンドゥーラ奏者、ナターシャ・グジーさんのコンサートが十和田で開かれ、行ってきました。バンドゥーラは前にテレビで見たことがありますが、実物を見たのは今回が初めてです。ウクライナの民族楽器で、弦が60本、抱えるほどの大きさで重さは8キロもあるそうです。音はチェンバロや琴のようと紹介されていましたが、アコスティックギターのようにも聞こえます。昔、盲目の奏者が旅をしながら弾いていた楽器で、日本の琵琶と通じるところがあると紹介していました。しみじみとした音色で、透明感のある美しい歌声と郷愁を誘うバンドゥーラの響きがとても印象的でした。

 コンサートは、トークを交えながら、ウクライナの歌、自作の歌、日本の歌を弾き語るものでした。全体として一体感、統一感のある選曲、演奏で、素晴らしい構成でした。各演奏の前に、ナターシャさんがそれぞれの歌に対する想いを語っていました。家族や友人について、郷里について、自然について、民族の歴史や伝統について。

 映画「千と千尋の神隠し」で有名な「いつも何度でも」では、この歌に込められた深い哀しみについて語っていました。「秋桜(コスモス)」を歌う前に「いつも自分の母を思い出す」と話していました。「防人の詩」を聴いたのは何十年ぶりだったでしょうか、魂の叫びが伝わってきました。ウクライナの歌を挟んで、最後に歌ったのは「ふるさと」 日本語を母国語としない人でこれほど美しい日本語を話し歌う人を見たのは初めてです。ナターシャさんが日本を愛し日本人と深く心を通わせていること、加えて私たちとウクライナの人たちの心の近さ、そしてそれ以上に、国に関係なく誰にでもある普遍的な感情や優しさを感じました。

 演奏の合間にはいろんなお話を聞かせてくれました。6歳のとき自宅近くのチェルノブイリ原発の事故で被爆し多くの大切な人と故郷を亡くしたこと、バンドゥーラに魅せられて音楽学校で学んだこと、2000年に来日し音楽活動を続けてきたこと、日本や日本人が大好きなこと、多くの日本人にウクライナのことを知って好きになってほしい、ウクライナと日本の架け橋になりたいと思い、様々な活動に取り組んでいること等々。

 深刻なお話も多かったのですが、ユーモアたっぷりで、何度も笑いを誘いながらの楽しいトークで、会場で販売している自分のCDをしっかりとPRしていて微笑ましく思いました。また、郷土料理のボルシチを紹介していました。十和田の道の駅には材料のビーツがよく並んでいて、私も大好きです。ここでもウクライナとの縁を感じました。

 今回はチャリティーコンサートでした。パンフレットに書かれていたナターシャさんの言葉の一部を紹介します。

 「ウクライナは 歴史のうえでも これまでも何度も悲劇を経験してきました 私が経験したチェルノブイリ原発事故や 今回の戦争もそのうちのひとつだと私は思っています そのたびに 同じ数だけ ウクライナは立ち上がって悲劇をのりこえて今日まで歩み続けてきました 私は希望を決してあきらめません」「これからもウクライナへ 想いを寄せて頂けましたら 大変うれしく想います」

 次回は、最近学んだウクライナの歴史や文化についてお話したいと思います。