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隣地から伸びてきた樹木の切除

 

 こんにちは、弁護士の橋本です。

 私たちの生活において最も身近な法律である民法は、明治時代に制定され、120年以上の歴史があります。これまでにも部分的な改正は行われてきましたが、長い間抜本的な改正はなされてきませんでした。 この間、社会が大きく変わる中で最近までほとんど改正がなされてこなかったのは驚くべきことでしょう。 近年、大きな改正がなされておりますので、今回はその一つを紹介します。

 隣の土地に植えられた木の枝が伸びて自分の家の庭にかかっている場合についてときどき相談をお受けします。家に危害が及びそうな場合は一層深刻な問題となります。

 民法を勉強していると、早い時期に所有権に関してこの条文(233条)が出てきます。そこで、「民法では根が越境してきた場合は自分で切っていいが枝が伸びてきた場合は自分で切るのではなく相手に切ってもらう必要がある」と学ぶのですが、なぜ根と枝で扱いが違うのか、本当に根の場合は切ってしまって後で責任を問われないのか、枝を相手が切ってくれないときはどうすればいいのか、など次々と疑問が浮かんできたものです。

 隣の土地の木の枝が境界を超えて自分の土地に入ってきた場合について、これまでは、木の所有者に枝を切除するよう請求できるだけでした。自ら人の木の枝を切ることができないので、木の所有者に対して枝を切るよう求めることになります。隣の家との関係が良好であれば、話し合いで解決できることもあるでしょうが、相手方が対応してくれない場合には、越境した木の所有者を相手方として裁判を起こし、裁判所から枝の切除を命ずる判決を得て、さらにこの判決に基づき強制執行の手続をとる必要がありました。隣人を訴えるのは抵抗があるでしょうし、近年、空き家が増えており、そもそも誰を相手方として裁判を起こせばいいかが分からないというケースも多々あります。これではあまりに土地所有者側の負担が重いとの批判は以前からありました。

 そこで、民法が改正され、令和5年4月1日からは、以下のいずれかの要件を満たす場合には、越境してきた土地の所有者は自ら枝を切除できるようになりました。

その要件とは、

  • 木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したにもかかわらず木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
  • 木の所有者を知ることができないとき又はその所在を知ることができないとき
  • 急迫の事情があるとき

です。

 枝を切除するために隣の土地に入る必要がある場合には、予め日時などを通知して必要な範囲内で隣の土地を利用することができます。

 実際のケースでは、要件に当てはまるかどうか、当てはまるとして本当に枝を切ってしまっていいのか迷うことも多いでしょう。できれば相手の了解を得てから切るなど話し合いで解決する方が望ましいともいえます。 それでも、この改正は、社会の変化に合わせたものの一つといえるでしょう。