こんにちは、弁護士の橋本です。
今回は、相続登記の義務化についてお話します。今年に入って法務省や自治体で積極的に広報し、ニュースで取り上げられていることもあり、多くの相談が寄せられています。知り合いの司法書士の方に聞いても、最近、この問題で相談に来る方が多いと話していました。
さて、法改正の内容についてですが、今年の4月から、不動産を相続により取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならなくなりました。今年の4月以降に相続した場合だけでなく、その前に相続が発生して相続登記がなされないままになっている場合にも相続登記を行わなければならず、その場合には令和9年3月まで猶予期間が設けられました。
その背景として、相続登記が長年されないことにより登記事項を見ても所有者が分からない状態のまま、適切に管理されていない空き地や空き家が増えていることがあります。最新の統計によると、空き家は全国に900万戸あり、2018年から50万戸以上増えていて、大きな社会問題となっています。十和田市内にも、雑草に覆われた空き家が散見され、日々この問題を実感しているところです。特に、祖父母やさらにその前の代の名義のままになっていると、相続人が多数に及び、災害復興や都市開発の妨げともなります。東日本大震災を機に、この問題が大きくクローズアップされました。
こうした事態を防ぐために、相続により不動産を取得した場合には、一定期間内に相続登記をすることが義務づけられました。 期間内に正当な理由なく登記をしないままにしておくと10万円以下の過料が科される可能性があります。もっとも、重い病気にかかっている、相続に関して争いになっている、経済的に困窮しているといった事情があれば、登記義務を免れることもあります。また、親族間で相続に関する協議がまとまらない場合には、相続登記とは別に、自分が相続人の一人であることを示す相続人申告登記という制度も新設されました。
以前取り上げた相続土地国庫帰属制度の説明と重なるのですが、本来、自宅の土地や建物、田畑、山林などの不動産は重要な財産であり、相続が発生すれば多くの場合、相続人のいずれかの人がこれらの不動産を引き継いできました。ところが近年、少子化、核家族化、都市部への人口移動、地方の過疎化などの傾向が顕著となり、親の不動産の利用を子が望まないケースが増えてきました。自宅が空き家になるきっかけとしては、一人暮らしの親が亡くなって離れて暮らす子どもたちが自宅の取得を望まず相続放棄をするケース(相続開始を知って3か月以内に行う必要がありますので注意が必要です)のほか、高齢になって施設に入居することで空き家になるケースが多いと聞いています。
空き地、空き家は遺された相続人にとって大きな問題ですが、近隣に住む人にとっても人ごとではありません。管理責任を負うべき所有者が特定できないと、適切に管理するよう求めることすら困難になります。不動産は重要な財産には違いないのですが、このように、管理責任を伴うものという側面も、近年特に強く意識されてきています。
特に、親が暮らした自宅の相続の問題は、多くの人が悩んでいることと思います。まずは家族でどのように管理・処分していくのか、それぞれの希望も述べ合いながら話し合うことが重要です。家族で話し合いがまとまっているのであれば、登記手続に関する相談を司法書士にされるといいでしょう。家族間で話し合いがまとまらない、どのように進めていけばよいか分からない場合には、早めにご相談ください。