青空カフェcafe

民事訴訟手続(続き)

 こんにちは、弁護士の橋本です。

 前回に引き続き、民事訴訟手続についてお話します。

 裁判で訴えられた人のことを「被告」ということは前回述べました。被告の立場からすると、ある日突然、裁判所から「訴状」と「期日呼出状」が送られてきます。「送達」といって、書留郵便のように郵便局員から直接受け取ります。家族などが代わりに受け取ることもできます。

 被告となった場合、答弁書を提出せず、第1回口頭弁論期日に出頭せず原告の主張を争わなければ、被告が原告の主張を全て認めたものとして扱われ、原告の請求どおりの判決が出てしまいます。原告の請求を争うのであれば、被告としては、第1回口頭弁論期日に出頭できなくても、答弁書を裁判所に提出しておく必要があります。

 原告の請求を争う場合には、答弁書に「請求の趣旨に対する答弁 原告の請求を棄却する。」と書きます。本来であれば、答弁書に、訴状の「請求の原因」のどの部分を争うのかを記載するのですが、十分検討する時間がない場合には、「請求の原因に対する認否 追って認否する。」と書いておき、次回以降、反論していくことになります。

 第1回口頭弁論の次の期日は、原告(代理人)だけでなく被告(代理人)も出頭できるように期日を調整します。口頭弁論というのは、裁判所の法廷(テレビなどでも映される裁判所のイメージです)で、一般の人も傍聴が可能な公開手続で行われるものです。多くの事件では、第1回口頭弁論の後、「争点及び証拠の整理」(原告と被告がどこを争うのか、そのための証拠は何かを整理することです)のため、非公開の「弁論準備手続」で裁判が進められます。弁論準備手続は、通常の法廷ではなく、会議室のような部屋で、丸テーブルを囲んで、裁判官と当事者(代理人)が話し合いながら進めます。通常の法廷のように裁判官が高いところから見下ろすのではなく、また裁判官は黒い法服を着ないで、ざっくばらんな雰囲気で話し合います。

 弁論準備手続は、一般的には月に1回程度のペースで行われ、次回までに裁判所が当事者の一方または双方に主張すべき点を「準備書面」にまとめ、「書証」があれば併せて提出するよう指示します。双方の主張と書証が出揃ったと判断すれば、裁判所は弁論準備手続を終わらせ、口頭弁論に戻して、公開法廷で「人証」手続を行います。人証とは、当事者や証人(目撃者など)が法廷に出頭し、証言台の前で嘘をつかないという宣誓をして、裁判官のまえで証言する手続です。人証後、裁判所は審理を終結して判決言渡期日を決め、判決します。判決に不服があれば、2週間以内に控訴の手続をとります。控訴審は、青森地裁(本庁)、十和田支部、八戸支部の事件については仙台高等裁判所が管轄となります。

 これが判決までの流れですが、民事訴訟の多くの事件は、判決ではなく和解で終了しています。裁判官は、適宜、当事者に和解を勧めることができます。第1回口頭弁論後、弁論準備手続の中で和解することもありますし、人証後、判決言渡前に和解することもあります。

 ところで、先ほどの交通事故の例でいえば、被告の側にも車両の損傷などの損害が生じている、被告も原告の過失を訴えたい、ということがあります。そこで、この場合には、現在進行中(係属中)の事件の中で、被告の方から原告を訴えることが出来ます。これを「反訴」といい、反訴を提起すると、被告は「本訴被告・反訴原告」と呼ばれます。原告は、「本訴原告・反訴被告」です。交通事故の裁判では、多くの場合、このような展開となります。双方の過失割合や損害が争点となります。

 民事訴訟は、人証を除けば、訴状、答弁書、準備書面と書証の審理を中心に進められます。そのため、訴訟代理人を務める弁護士には、論理的で説得力のある書面を作成する能力が求められます。