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ショパンコンクール

 こんにちは、弁護士の橋本です。

 今年の10月に開催された第18回ショパン国際ピアノコンクールで日本人ピアニストの反田恭平さんが2位、小林愛美さんが4位に入賞するという快挙を達成し、テレビやインターネットでも数多く取り上げられています。そこで、今回はショパンコンクールの話をしたいと思います。

 私は、今年のコンクールのファイナルの前に、NHKのクラシック音楽館「ショパンコンクールのレジェンドたち」という番組を見ました。古い白黒映像なども交えながら、コンクールの歴史を紹介しつつ過去の優勝者を取り上げていました。

 第一次世界大戦の後、民族自決の理念の下で独立したポーランドにおいて、戦争で荒廃した人々の心を癒やし、国民に誇りを取り戻すべく、祖国が生んだ偉大な音楽家ショパンの名を冠したコンクールを開催することとなりました。こうして始まったコンクールの第1回は1927年、それからは第二次世界大戦の間の中断を挟みながらも5年に1回、ポーランドのワルシャワで開かれてきました。このコンクールの特徴は、ピアノのみのコンクールであること、演奏される曲が全てショパンの作品であることです。

 1960年の優勝者マウリツィオ・ポリーニは、審査員長でショパン演奏の大家として知られていたルービンシュタインから「我々審査員の誰よりも上手い」と絶賛された有名なエピソードがあるそうです。番組では、日本の音楽評論家が、今まで多くの演奏家と握手したがポリーニと握手してその指のあまりの筋肉に驚いた、あの指からあの演奏が生み出されるのか、と話していました。筋肉質の体なら分かりますが、筋肉質の指ってどんなで感じでしょうか、想像がつきません。ポリーニのCDを1枚持っていますが(ベートーベンのピアノ・ソナタ集)、とにかく力強い完璧な演奏です。

 その次の1965年の優勝者がマルタ・アルゲリッチです。あるとき私は、クラシックのピアノを聴こうと思い、偶々CDショップで手にしたのがアルゲリッチの演奏するショパンのピアノ・ソナタ、ポロネーズ、マズルカが収められた作品集でした。スケールが大きく情熱的で、今でもよく車の中で聞いているお気に入りの1枚です。1967年の録音でCDのジャケットは50年以上前の写真でしょう。随分昔の人と思っていたら、今年テレビで、ヨーロッパのコンサートでオーケストラと共演しているのを見ました。凄い指の動きで、全く衰えている感じがなく、それもまた衝撃でした。

 私が初めてショパンコンクールをテレビで見たのは1985年の第11回コンクールで、優勝者はスタニスラフ・ブーニンです。このときのブーニンは伝説と言って良いほど際だっており、専門的なことは分からない私でも明らかにほかとは違う、と思わされるものでした。今、当時の映像を見ても、正統派という感じではなく個性的、独創的で楽しい演奏です。コンクールの後で公演のため来日し、大変なフィーバーとなったこともよく覚えています。

 私は前に、「題名のない音楽会」という番組で反田さん、小林さんを見たことがありました。お二人は幼なじみとのことで、仲の良さと互いの才能に対するリスペクトが言葉の端々から伝わってきました。そして先日、ショパンコンクールの特集番組で改めてお二人の演奏を見ました。反田さんは人柄も演奏も自由で楽しく、小林さんからは溢れんばかりの情感が伝わってきます。これからもお二人の活躍に注目していきたいと思います。