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WEB裁判

 こんにちは、弁護士の橋本です。

 今回は、民事訴訟手続におけるWEB会議の利用についてお話します。

 現在、弁護士が代理人を務める民事訴訟裁判手続において、WEB会議が広く利用されています。WEB会議が導入される前は、代理人は裁判所に出頭するか、出頭しない場合にはそれぞれの弁護士事務所と裁判所をつないだ三者通話による電話会議の方法で訴訟を進行させていました。WEB会議の導入により、実際に裁判所に足を運ぶ機会が大きく減りました。訴訟手続におけるITの活用はコロナ禍前から準備されていましたが、コロナ禍によりWEB会議の利用が一気に進みました。

 民事訴訟手続は、訴状、答弁書、準備書面といった当事者の主張を記載した書面と書面による証拠(書証)を互いに提出しながら進行します。多くの期日は提出した書面の確認と次回の進行の打合せをしてごく短時間で終わるので、期日のためだけに敢えて裁判所にまで足を運ぶのはかなりの負担でした。裁判所へ出向くことがなくなると、双方代理人の移動の時間がなくなるので、次の期日の日程が入りやすくなり、遠方の裁判所であればその効果は絶大です。その結果、裁判が円滑に進行するようになりました。民間企業においては裁判所よりも早くWEB会議を導入したところも多いと思いますが、移動に伴う時間と費用の削減というWEB会議のメリットが、ようやく裁判の場でも浸透してきました。

 WEB会議は第1回目の期日から行われます。そのため、裁判所に一度も足を運ばずに審理が終結することもあります。先日、私も県外の裁判で10回近い期日を全てWEB会議で事務所から出頭して審理終結となりました。

 WEB会議が導入される前は、普段の期日は電話会議で行うとしても、当事者や証人が証言する尋問手続だけは裁判所に出頭する必要がありました。尋問は、1日だけであっても遠方の裁判所の場合には負担が大きく、私は以前、広島県の裁判の尋問のため2泊3日の出張をしたことがありました。今では、事案にもよりますが、最寄りの裁判所に出頭して裁判所間をWEBでつないで尋問を行うことも出来ます。WEBによる尋問を私も何回か経験しましたが、一方当事者が遠方の場合、移動のための時間、労力、費用を省けて大変助かります。結果として、どこの裁判所で裁判を行うかという裁判管轄の問題についての深刻な争いが回避されるようになりました。

 民事訴訟をWEBで行うことによる移動コストの削減というメリットは、最終的には弁護士に事件を依頼する人が享受することになります。弁護士の出張費用の負担を免れることも重要ですが、期日調整がしやすくなることで事件が円滑に進行し、より早期に解決することが期待できるからです。  裁判手続におけるITの活用はこれにとどまりません。既に実施されているものもあれば、今後実施が予定されているものもありますが、それでも世の中全体の中では遅れている方だと思います。ITの活用により、当事者の利便性や、事件処理の効率が上がることはとても大事です。その一方で、適正な審理を犠牲にした効率一辺倒では困ります。当事者にとってのデメリットはないのか、デメリットがありうるとして運用でどのようにカバーしていくかという観点が、代理人の弁護士にとってこれからますます重要になってきます。このテーマは引き続き取り上げていきたいと思います。