法律コラムcolumn

法律コラム3 「遺留分」

父が亡くなりました。母は健在で兄と同居しています。ほかには兄弟はありません。父は、すべての財産を兄に相続させるという遺言書を残していました。このような遺言書があると、私は何ももらえないのでしょうか。

遺留分という制度があります。遺留分とは、相続人(ただし兄弟姉妹が相続人の場合は除く)が法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合のことで、遺言をもってしても奪われることのない利益のことをいいます。
本件では、あなたは、被相続人の子として、法定相続分(4分の1)の2分の1、すなわち、お父さんの遺産の8分の1について遺留分を有しています。

遺留分を受けるためには、どのようにしたらよいのでしょうか。

相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年以内、かつ相続開始から10年以内に遺留分減殺請求権を行使しないと、時効により権利が消滅してしまいます。
その前に、お兄さんに対し、遺留分減殺請求を行う旨の意思表示を内容証明郵便で行うのがよいでしょう。

兄と一緒に遺言書を確認したとき、私は兄に対し、父の遺思は尊重したいが、自分にも父の遺産を多少分けてほしいと言いました。私が兄に遺産を分けてほしいと申し入れたことは、遺留分減殺請求をしたことにはなりませんか。

遺産分割と遺留分減殺は別の制度ですが、「被相続人の財産すべてが一部の相続人に遺贈された場合は、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申し入れをしたときは、特段の事情がなければ、遺産分割の申し入れに遺留分減殺の意思表示が含まれている」という裁判例があります。
本件では、あなたのお兄さんに対する申し入れに、遺留分減殺の意思表示が含まれていると考えることもできるでしょう。

兄と話し合いをしましたが、うまくいきません。何か解決方法はありますか。

家庭裁判所に「遺留分減殺による物件返還調停」を申し立てるという方法があります。
調停手続を利用しても解決しない場合には、地方裁判所(または簡易裁判所)に遺留分減殺請求訴訟を提起することになります。