法律コラムcolumn

法律コラム14 「民法改正・賃借人の原状回復義務」

今回の民法改正で、住居の賃貸借契約における原状回復について明文化されたと聞きました。

賃貸借契約が終了したとき、賃借人の原状回復義務(借りる前の元の状態に戻すこと)について、現行の民法では、その範囲を定めてはいませんでした。
改正民法では、賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)を原状に復する義務を負う、とし、賃借人が義務を負う範囲を定めました。ただし、その損傷が賃借人の帰責性に基づくものであるときは、賃借人は原状回復する義務を負うことも明文化されています。

そうすると、住居の賃借人はどの範囲で原状回復義務を負うことになるのですか。

タバコの火の不始末のように賃借人の故意過失による損傷については賃借人の費用負担で原状回復しなければなりませんが、社会通念上通常の使用により生じた劣化について賃借人は原状回復義務を負わない、ということになります。

当事者間で合意をして、通常損耗も賃借人が負担すべき原状回復義務の範囲に含めることはできますか。

この規定は、強行規定ではなく任意規定とされているので、当事者間の特約で異なる合意をすることはできます。もっとも、消費者契約法10条では、一方の消費者に不利な内容の契約は無効であると定めていますので、これにより当事者間の特約も無効とされる場合もあります。

現在すでに締結されている賃貸借契約にも、この規定は適用されるのでしょうか。

この規定は、施行日以後に締結された賃貸借契約に適用されますので、それまでは適用されません。施行日は未定ですが、2020年ころ(改正から3年以内)と見込まれております。